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作者:七瀬

プロフィール

・1977年7月生まれ
・職業:某デリヘル店に勤務

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『たなびけば、』 (3)

4月 4th, 2012
と彼が事務的な口調で言って、カチャカチャとベルトを外す音がしたかと思うと、彼のチ●ポが私の中にメリメリと入ってきた。私の奥に押し付けるように、グリグリと腰を回している。奥が気持ちよくて、快感が全身に広がっていく。全身がオ●ンコになったみたいに、頭の先から足の指の先まで、気持ちよくなる。
「…イっちゃいます…イっちゃいます…ぁあ…」
「イクな。ダメだ。お前がイクのが目的じゃないんだ。俺をイかせろ」
イクその時は、もうそこまで来ていて、イかない為に、快感の波を流すのに息を整えたかったが、彼の口で私の口を塞いだ。オ●ンコの奥を突かれながら、舌が絡んで、彼の涎を飲む。下も上も、私達は繋がっている。縛られた足に力が入る。彼のリズムが早くなる。
「お前のオ●ンコ、グニュグニュ動いてるよ。うぅ…締まる…」
彼が腰を上下するたびに、クチュクチュといやらしい音がしている。手を伸ばして、彼に抱きつく。白衣の匂い。彼の汗が私に落ちる。もっと、私を壊して欲しい。
「…ごめんなさい…イっちゃう…」
頭の中で何かがはじけて、私はイってしまう。現実から遠く離れるが、快感によって戻される。全身がオ●ンコになったまま、快感から逃げられない。縛られた足が痛い。乳首をぎゅっとつままれ、痛い。苦痛と快感が同時に私の中にいる。私をどうにでもしてください。
ぁあ出る、と言って、彼が私の体から離れた。精子が出る瞬間に枕もとのシャーレを手に取り、それに出したようだ。私は自由なままの手で、アイマスクを外し、縄を解き始めた。その間に彼は、精子を、スポイトに少し取って、ガラス板に移し、空気が入らないように注意深くカバーガラスを置いていた。ハァハァと息が上がったまま、接眼レンズを覗きながら、顕微鏡の反射鏡の角度や倍率を合わせる彼の瞳だけが、薄暗いこの部屋の中で光を受けて茶色に光っていて、スポットライトに照らされているようで、キレイだな、って思って見ていた。
「見てごらん」
顕微鏡を覗くと、白く光る粒がたくさん見えたが、私の想像とは違っていた。本やテレビなどで見る、ニュルニュルど動き回るおたまじゃくしではなかった。
「動いてないじゃん」
「倍率が低いからな、よく見て、動いているやついるよ」
目を凝らすと、たくさんの白い粒の中に縦横無尽に動き回る何個かの粒があった。
「あ、動いてるの見つけた!」
「ごめんな、俺、歳だからなぁ…精子も元気ないんだよなぁ」
しみじみ言う彼を見たら同意できなかった。確かに若くはない。動かない精子を見る事で、自分の生殖能力の衰えを感じてしまったかもしれない。眼鏡を外し、白衣がずれて、髪が乱れている彼は、無防備だ。ザラザラしてた縄の跡が悲しい。精子を見たい、なんて言うんじゃなかった。
「違うよ、酸素に長く触れて死んじゃったんだと思うよ、きっと」
これだけの人間がどこかへ行くために、ここにいる。ここにいるが、ここが目的地ではない。私は、あの人から物理的に遠く離れたのだ。日本人の味覚を裏切らないことを期待して、世界的に有名なハンバーガー店でセットを注文したが、紙みたいな味だった。私は、お腹がすいていたわけじゃなかった。何をしていいのか、わからなかっただけだ。これだけ人間が溢れているのに、私は誰からも必要とされていない存在だ。この瞬間、私が消えて無くなっても、たぶん、だれも気がつかない。離れた席の中国語を大きな声で話している家族連れがうるさい。子供がポテトを床にこぼしながらトレーに乗っている食べ物で遊んでいるが、親は気にしていない。食器がぶつかる音、誰かがトレーを落とす音。何かの放送。誰かを呼ぶ声。ラーメン、ハンバーガー、ピザ、パスタ、チャイニーズ、ケーキ、コーヒー、いろんな匂いと人々のざわめきが混ざり合い、終わらない豪雨のように、湿って密度が高い空気が充満して響いている。下の階で、エスカレターに乗ろうとして、大きなケースを持ったお婆さんと頭にターバンを巻いた男がぶつかったのが見える。動く歩道を走る男がいる。メガネをかけた女の子が空港内の案内図を見ながら歩いている。エレベーターが開いて、何人もの人達が降りて、待っていた何人かの人達が乗る。荷物を運ぶための大きなカートを重ね長い列にして異動する空港の職員。蠢く精子は、みんな忙しそうに足早だ。

「よし、性器は問題ない。では、始める」

と彼が事務的な口調で言って、カチャカチャとベルトを外す音がしたかと思うと、彼のチ●ポが私の中にメリメリと入ってきた。私の奥に押し付けるように、グリグリと腰を回している。
奥が気持ちよくて、快感が全身に広がっていく。
全身がオ●ンコになったみたいに、頭の先から足の指の先まで、気持ちよくなる。

「…イっちゃいます…イっちゃいます…ぁあ…」

「イクな。ダメだ。お前がイクのが目的じゃないんだ!俺をイかせろ!」

イクその時は、もうそこまで来ていて、イかない為に、快感の波を流すのに息を整えたかったが、彼の口で私の口を塞いだ。
オ●ンコの奥を突かれながら、舌が絡んで、彼の涎を飲む。
下も上も、私達は繋がっている。縛られた足に力が入る。彼のリズムが早くなる。

「お前のオ●ンコ、グニュグニュ動いてるよ。うぅ…締まる…」

彼が腰を上下するたびに、クチュクチュといやらしい音がしている。
手を伸ばして、彼に抱きつく。白衣の匂い。彼の汗が私に落ちる。もっと、私を壊して欲しい。

「…ごめんなさい…イっちゃう…」

頭の中で何かがはじけて、私はイってしまう。
現実から遠く離れるが、快感によって戻される。
全身がオ●ンコになったまま、快感から逃げられない。縛られた足が痛い。
乳首をぎゅっとつままれ、痛い。苦痛と快感が同時に私の中にいる。私をどうにでもしてください。

ぁあ出る、と言って、彼が私の体から離れた。
精子が出る瞬間に枕もとのシャーレを手に取り、それに出したようだ。
私は自由なままの手で、アイマスクを外し、縄を解き始めた。
その間に彼は、精子を、スポイトに少し取って、ガラス板に移し、空気が入らないように注意深くカバーガラスを置いていた。
ハァハァと息が上がったまま、接眼レンズを覗きながら、顕微鏡の反射鏡の角度や倍率を合わせる彼の瞳だけが、薄暗いこの部屋の中で光を受けて茶色に光っていて、スポットライトに照らされているようで、キレイだな、って思って見ていた。

「見てごらん」

顕微鏡を覗くと、白く光る粒がたくさん見えたが、私の想像とは違っていた。
本やテレビなどで見る、ニュルニュルど動き回るおたまじゃくしではなかった。

「動いてないじゃん」

「倍率が低いからな、よく見て、動いているやついるよ」

目を凝らすと、たくさんの白い粒の中に縦横無尽に動き回る何個かの粒があった。

「あ、動いてるの見つけた!」

「ごめんな、俺、歳だからなぁ…精子も元気ないんだよなぁ」

しみじみ言う彼を見たら同意できなかった。確かに若くはない。
動かない精子を見る事で、自分の生殖能力の衰えを感じてしまったかもしれない。
眼鏡を外し、白衣がずれて、髪が乱れている彼は、無防備だ。
ザラザラしてた縄の跡が悲しい。
精子を見たい、なんて言うんじゃなかった。

「違うよ、酸素に長く触れて死んじゃったんだと思うよ、きっと」

これだけの人間がどこかへ行くために、ここにいる。ここにいるが、ここが目的地ではない。
私は、あの人から物理的に遠く離れたのだ。
日本人の味覚を裏切らないことを期待して、世界的に有名なハンバーガー店でセットを注文したが、紙みたいな味だった。
私は、お腹がすいていたわけじゃなかった。何をしていいのか、わからなかっただけだ。
これだけ人間が溢れているのに、私は誰からも必要とされていない存在だ。
この瞬間、私が消えて無くなっても、たぶん、だれも気がつかない。
離れた席の中国語を大きな声で話している家族連れがうるさい。子供がポテトを床にこぼしながらトレーに乗っている食べ物で遊んでいるが、親は気にしていない。
食器がぶつかる音、誰かがトレーを落とす音。何かの放送。誰かを呼ぶ声。ラーメン、ハンバーガー、ピザ、パスタ、チャイニーズ、ケーキ、コーヒー、いろんな匂いと人々のざわめきが混ざり合い、終わらない豪雨のように、湿って密度が高い空気が充満して響いている。
下の階で、エスカレターに乗ろうとして、大きなケースを持ったお婆さんと頭にターバンを巻いた男がぶつかったのが見える。動く歩道を走る男がいる。メガネをかけた女の子が空港内の案内図を見ながら歩いている。
エレベーターが開いて、何人もの人達が降りて、待っていた何人かの人達が乗る。荷物を運ぶための大きなカートを重ね長い列にして異動する空港の職員。

蠢く精子は、みんな忙しそうに足早だ。

…つづく

七瀬 小説

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