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作者:七瀬

プロフィール

・1977年7月生まれ
・職業:某デリヘル店に勤務

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Archive for 8月, 2012

『たなびけば、』 (8)

8月 23rd, 2012

朝になっても眠れずにいた。真っ暗な夜から、青い朝になる。夜が遠のき、すっかり朝になりきるのを窓から見ていた。朝は来た、と思った。新しい1日は始まったのだ。シャワーを浴びて、テラスに朝食をとりに行った。クリスマスの朝だったが、カップルといえそうなものは、年を重ねた夫婦が1組いただけだった。大半が、白い肌のビジネスマンらしい人達で、ビジネスマンだと思ったのは、新聞を読みながらコーヒーやオレンジジュースを飲んでいる姿がとても自然に見えたからで、本当のところはわからない。彼らもパートナーにふられた、かわいそうな人達かも知れない。テラスに差し込む朝日が眩しくて、新しい朝が来たことが強制されたことのように思える。
部屋に戻ると彼が来ていて、ベッドに横になっていた。私は嬉しくて嬉しくて、彼に抱きついてキスをした。
「お前はバカだな」
そう、私はバカだ。彼に帰ってもらいたくなくて、セックスしようとしている。ネクタイを外し、シャツのボタンを外す。ベルトを外し、チ●ポを出す。彼の胸に唇を這わせる。彼は抱きしめてくれない。頭の上で腕を組んで、私を見下ろしている。彼に覆いかぶさるように乗り、腰をくねらせて、チ●ポでクリトリスを刺激する。バカなオマ●コはこんな時でも濡れる。新しい1日が始まったばかりの部屋で、私は時間を巻き戻したいと願う。昨日の夕方の私達に、1ヶ月前の、1年前の私達に、戻れたらいいのに、戻れない。お前はバカだ、と言いながらチ●ポを起たせる彼もバカだ。拒否してくれれば、いい思い出になる可能性もあったのに。服を脱ぎながらオマ●コをヌルヌルにして、腰を動かし、私はどうすればいいのだろう。クリトリスは熱を持ち、足まで痺れるような快感の中のため息、彼と目が合って、恥ずかしくなり逸らす。私はバカだから。彼が上になって、私はカエルみたいな態勢になって、ズクズクと彼のチ●ポを受け入れる。1番感じるのは奥の方で、だからこうやって、深く入れてくれる、いつも。いつも腰を回して深いところをグチュグチュしてくれた。内臓が揺れる感覚。
「お前はバカだ」
私の上で、腰を回しながら、また言った。クチャクチャいやらしい音を立てて、お尻の方まで濡らして、バカと言われ、別れたくないと言えない私。
「はぁ…もっとして、もっと、もっと、もっと」
オマ●コを中心に熱は体を支配していき、彼の動きが早くなって、射精の時が近いことがわかる。終わりたくないから体を離したいけど、彼の体重で動けない。
「ぁ…だめ…だめ、動かないで…まだ…」
まだ終わりたくないのに、ドクンドクンと私の中で、終わった。

彼が言う幸せは、安定のことで、常識的な感傷を植え付けてしまう彼は卑怯者だ。世の中の常識とか法律は、多数派の人に利益が出るようになっていて、損をする少数派になりたくなかったら多数派になりなさい、という大きな力が働いている。少数派が違う考えを持ち、違う行動をすることが多数派の脅威になるからだろうが、なぜ脅威になるのかはわからない。わからないが、私は絶対に多数派にはなれない、たぶん。彼は常識を使って私を引き止めない。いとも簡単にリリースしてしまった。私は、安定なんか欲しくない。人生なんて語りたくもない。私が欲しいのは、私が欲しいのは、私が欲しいのは。

つづく…

七瀬 小説