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作者:七瀬

プロフィール

・1977年7月生まれ
・職業:某デリヘル店に勤務

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Archive for 10月, 2011

『ルームナンバー1044』 (6)

10月 24th, 2011

部屋一面の窓から夕日に近くなった太陽が、そのままの恥ずかしい格好で俺を受け入れるしかない彼女を照らし、汗やその他の分泌物で光っている。 つながっている時、自由だ、と俺はいつも思う。彼女は自由の象徴だ。

金で買える女は掃いて捨てるほどこの世に存在する。そしてそのイージーな快楽に夢中になっていた時期もあったが、当たり前だが、自由だ、と思える瞬間を迎えられる相手はいなかった。金が付いてくれば何でも許されると思うタイプの女は、たいがい知らないことを自分の知っている知識の中だけで納得しようとしてしまう。それが恐ろしい事だということも知らない。自分が何を知らないか知ろうとしない女が多い。小さい体の女を犯すのも残酷な感じがしておもしろいとは思うが、俺の求めているものは絶対にそこにはないとわかってしまって、だからプレイが終わると空しくなる。
スケベとは恥のこと以外何ものでもない。スケベは体を使い脳でするものだ。

俺と彼女のつながっている部分に温かい液体が流れて、彼女が潮を吹いたとわかる。動きに合わせて、さらにグチュグチュと大きい音がしている。彼女の声と、俺の息。早く彼女の中に出したいと思うと同時に、ずっとこのままつながっていたいと思う。彼女の赤い縄を解き正常位にする。縄の跡が白い体を這う。手が自由になったとたん、俺の首を引き寄せて抱きしめられる。お互いの汗でヌルヌルと滑り、彼女の髪が顔に張り付く。カウチが軋んで、俺の汗が彼女に落ちて、彼女は俺の腰に足を絡め、キスをしてジュルジュルと涎を移しあい、上にずれていく彼女の肩を押さえ付け、ヒクヒクと蠢(うごめ)く熱いヴァギナに締め付けられながら深く深く奥まで入れて、「センセイ」とうわ言のように呟き続け反り返る彼女の顎から胸に繋がる白い曲線の影、縄の跡、緑色に血管が透けて見える。動きを早めるにつれ彼女のうわ言がすすり泣きのような声に変わって、紅く上気し、一瞬だけ目が合い、快感の波が俺の頭の中まで支配して、目をぎゅっと閉じ、彼女の奥、子宮の入り口のもっと奥まで深いところで精子をぶちまけた。ずいぶんと長い間ドクドクと続いて、現実の世界に戻る途中で、遠くで携帯の着信音が聞こえた。

体力を使い切って力の入らない体を起こし、ぐったりとしてる彼女の頭を撫でる。携帯を開くと、妻からの着信だった。
「ちょっと電話してくるね」
の一言で彼女は全て理解している。バスルームの近くで妻に電話する。コール音。理解しているからこそ傷ついているのではないかと思う。物音一つ立てずに、快感の余韻の中で、俺を待つ。
「もしもし、今、何で電話に出なかったの?」
「会議していたんだ、他の先生方も一緒だったから…」
「今日は何時に帰ってくるの?」
「いつもより少し遅くなるけど、犬の散歩には行くから、大丈夫だ」
「………今、どこにいるの?」
嫌な予感は危機の足音、静かに忍び寄り突然に姿を現す。

つづく

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