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作者:七瀬

プロフィール

・1977年7月生まれ
・職業:某デリヘル店に勤務

『たなびけば、』 (14)

3月 14th, 2013

イマジン、というビートルズの歌があった。たしか、世界をひとつにしようとか、今日を生きようとか、そんなことを想像してみて、という歌だった。スケベなことも想像の範ちゅうに含まれているのだろうか。
たぶん、含まれている。だって、日本人以外の人とひとつになっているし、最善と思える方法で私なりに今日を生きているのだから。

キスをしている最中に目を開けると、タイ人も目を開けていて、私達は見つめあう。白いソファに倒れこむ。

「好きだ」

唐突に言われ、その意外な言葉に私は声を上げて笑ってしまう。

「本当?」

「香港で見かけた時から、ずっと気になっていたんだ。今は君が好きだ」

まるで高校生の告白のようじゃないか。私はおかしくなって、また笑ってしまう。日本語と英語が混ざった会話も嫌いじゃない。抱きしめてくれる腕は私には必要だ。頭を押さえられてのキスは嫌いじゃない。野生的な匂いは好きだ。長いまつ毛も浅黒い肌も好きだ。頬まで涎が垂れるキスはゾクゾクする。一枚ずつ脱がされていくのはドキドキする。

タイ人のベルトを外しチャックを下ろしパンツを膝まで下げる。固い陰毛が密集している。私の口の中には唾液が溜まっていて、今にもこぼれ落ちそうだ。
腰の辺りに血液が集中して流れ熱くなり、子宮がキュウキュウと収縮を繰り返しているのがわかる。
唇でそっと陰毛のふちに触れる。それから、ヌルヌルとした透明の分泌液を舌ですくう。
タイ人の亀頭と私の舌は分泌液が糸をひいて繋がっている。亀頭の割れ目に沿って、固く尖らせた舌を上下する。舌全体を使って、円を描くように舐める。
タイ人の息が荒くなり、私の頭を押さえ、うぅと声を洩らし、腰が動く。私の口の中に全体を収めてしまうように、腰で無言の催促をする。私は意地悪をして、サオの部分にキスをしてから、その裏側を舌全体で下から上へ刺激する。
陰毛はタマの部分は薄くなり、その皺が見える。皺の一本一本を丁寧に舐める。
亀頭に触ると分泌物で濡れていて、手のひらで滑らかに撫でる。まるで、いい子いい子と褒めるように。タイ人は、君が好きだ、そう言った。いい子、いい子。唇をすぼめて、くわえる。突き立てられる肉の感触は、私の淫らな欲をかきたて、唾液の分泌を促す。喉の奥への刺激で私はさらに濡れている。
視線をタイ人の顔に移すとこちらを見ていて恥ずかしくなり視線をそらす。目を閉じると欲望に素直に酔える気がする。

「明日はタージマハルに行こう」

セックスの後のけだるさの中、タイ人は言って白いソファに深々と座りなおした。
この男は私に、素直に不器用だ、と言った。そして、君が好きだ、と言った。大きな窓の外には建設中のマンションが見える。遅い時間になっているのにもかかわらず、建設のための作業は続いている。
外に出れば、その音が聞こえるだろうが、2重のガラスで隔てられたここは静かだ。
タイ人がタバコに火をつける。音も立てずに回り続けるシーリングファン。消えたように見える煙は、天井や壁に張り付き、いつのまにか茶色く汚してしまうだろう。

つづく…

七瀬 小説