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作者:七瀬

プロフィール

・1977年7月生まれ
・職業:某デリヘル店に勤務

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Archive for 11月, 2011

『ルームナンバー1044』 (8)

11月 12th, 2011

ついつい考えてしまう。「センセイ、会いたかった」とさっき彼女が言った言葉は本当なのだろうか。こんなにお互いの唾液を混ぜ合わしていても、答えは導けない。俺の唾液まみれの彼女の顔、上唇と下唇を舌でなぞり、また食べあうように口を開け、舌を絡める。舌はまるで軟体動物のようだと思う。ニュルニュルと彼女を味わう。彼女の目は潤んで熱を帯び、しかし俺を詰っているように見える。
浮気がバレそうになって「しばらく会えない、我慢して」と書いたメールを彼女に送信した時、罪悪感に苛まれた。「わかってる」と返信が来たた時、ほっとした。ほっとしてしまう自分はきっと卑怯者だ。いや確実にそうだ。「仕方ないんだ」独り言を言って、携帯をシークレットモードにして家族が集うリビングに向かった。
咳き込み
「苦しいよ、センセイ」
と彼女に言われて、自分の腕に必要以上の力が入っていたことに気付いた。俺に思い切り抱きしめられて「苦しい」と嬉しそうに言う彼女が愛おしい。前から、今も。腰から胸に繋がる曲線を右手でなぞり、肋骨を覆う固い胴体から柔らかい肉が乗る胸へと滑らせる。薄暗いマンションの玄関。先へ続く明るいリビングの窓から水色の空が見える。耳へ唇を寄せ
「俺も会いたかったよ」
息を吹きかけるように言うと「はぁ…」と息を洩らし、俺の首に回している彼女の腕の力が抜ける。左腕で彼女をしっかり支えた。反対の手で、彼女のシャツをめくる。薄紫色のブラジャーに押さえられた胸が窮屈そうだ。白い肌に浮かぶ薄緑色の血管が美しく、敬意を込めてキスをする。ムニュムニュとした胸に顔を埋め、彼女の匂いに包まれる。狂おしい。靴を脱いで、玄関の狭い廊下の壁に彼女を乱暴に押し付けると、薄い壁特有のダンッという派手な乾いた音が響いた。困った顔をして俯く彼女のスカートに手を差し入れ、太股の内側をゆっくり撫でる。足を閉じようと力を入れるが、俺の足を彼女の足の間に入れて阻止する。薄いパンツに指が触れて、彼女はビクンッと跳ねた。柔らかなその部分は、薄い布を通り越してヌルヌルが染み出ている。足を閉じようと尻を左右にくねらせるだけで、布の刺激を受けている。
「こんなになっているじゃないか…」
そう彼女に言ってみたが、俺の物もどうしようもないぐらいにエレクトしていてヌルヌルがズボンまで染み出てきそうな勢いだ。パンツの隙間から指を入れて湿ったヴァギナに触れクチュクチュ音を立てて彼女に聞かせる。
「聞こえるか? 久しぶりに会ったのに、全く、お前は、いやらしい、しょうがない奴だ」
そう、しょうがないのは俺のほうだ。彼女が俺のベルトを外そうとそっと手を伸ばす。
「何をしてるんだ、だめだ、ベルトを外していいなんて、俺は言ってないぞ」
「…はい」
と小さな声で頷いて、彼女はベルトから手を戻した。

つづく

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