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作者:七瀬

プロフィール

・1977年7月生まれ
・職業:某デリヘル店に勤務

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Archive for 2月, 2011

海岸(千葉県)

2月 23rd, 2011

スケスケのピンクのランジェリーは、オッパイからオナカまでをヒラヒラと飾る。小さなTバックは、隠すというよりも見せるためのものだ。シャワーを浴びて、ウキウキとそれを着けた。

私達の密会、短い時間だからこそ、濃縮されると思いたい。
「1ヶ月も会えなくてゴメン。お前の事は愛しているよ。本当だ。でも、家も大切なんだ…」

シーズンオフの白いホテルは岸壁の上に立つ。閑散とした冬の海岸線がここから見える。
太陽は優しく、水平線と空の視界を2分割する境目に船が浮かび、景色に備えつけられたチャックの取手のようだ。
目を凝らせば、Y○Kの文字が見えるかもしれない。波は穏やかに空の青を吸収していて、男の残酷な謝罪にも理解を示してしまう。

「本当に、私を愛してるの?」
答えるセリフがわかっている質問をして甘えてみせた。
「もちろん」
男は即答して、私の肩を引き寄せ、厚くしっかりとした胸に、痛いほど抱き締めた。

「愛してるよ」
ここからじゃ波の音は聞こえない。風の匂いもしない。チャックの取手が 霞 ( かす ) んで、消えそうだ。落ち着きのある声のせいで、嘘に聞こえる。顔が見えない。私を見つめて言って欲しかった。
愛してはいるけれど、大切ではないのね…

正面から、きつく乳首をつねられ、おっぱいを揉みしだかれる。腰のほうに血液が集中してくるのを熱く感じて、化繊の薄い生地の肌触りがザラザラしていて、チープさが、いやらしさを 煽 ( あお ) る。

腰をくねらせると、Tバックの紐がお尻からオマ○コにギュウっとくいこんで、自分でもわかるぐらいに、どんどんそこが、水分を含んでいき、男の手で乱暴にこすられて、クチュクチュと音が聞こえて、私の下半身は私から離脱して制御がきかない。
いや、下半身が離脱するんじゃない。私自身が離脱するのだ。

クリトリスを的確に 捉 ( とら ) えて 離さない男の指は固い。神経を直接触られているように、体がビクビクと波打つ。愛しさが増して、感情の極みに落ちる。
「もう、いっちゃう、だめ、ああ、いっちゃう」
オマ○コから、頭の先まで、白い電気が走り、解放された。

「大体の女が、お前みたいにクリトリスで感じるけどな、ヴァギナでも感じるようにしてあげるよ。女は男によって、何度でも産まれ変われるんだ。」
やさしい口調だが、こんなシーンでも、男の声はフラットだ。

地上を這うようなブーンという、ローターの音が聞こえて、私の目の前に、ピンクの震えるそれを差し出す。
「これが好きなんでしょ」
私は 頷 ( うなず ) く。

オマ○コを押し広げ、チ○ポがズブズブと奥深くまで到達すると、男はローターを浮かせるように、コードを短く持ち、クリトリスに優しく刺激を与える。チ○ポは、ほどんと動かさない。奥深くの子宮を撫でるように、腰を押し付けてくるだけだ。
今までにない快感に膝が震えだす。奥底から、沸き立つような、気持ちの高ぶりを隠せなくなってきた。クリトリスで達してしまうのか、これが男の言う、ヴァギナでの悦びなのか、わからない。イっちゃうかもしれない。太く固いものに刺され、固定され、オマ○コがヒクヒクしてるよ、と囁かれ、顔と体が熱くなり、胸は快感で満たされ、男の名前を何度も呼び、軽くイってしまって、腰が震え、男がピストン運動を始め、私の腰に乗っている柔らかな肉を、男が爪を立てるように握り、経験したことがない快感が込み上げ、腰が大きく仰け反り、水風船が地面に叩きつけられ、破裂するように、体の中心で、大きな悦楽が破裂し、私を包み込んだ。

男の携帯が鳴り、私達の密度の高い空気を切り裂いた。

「今日は早く帰らないといけなくなったんだ、娘の迎えに行かなければならなくてね。その後は買い物に付き合わなくちゃいけないんだ」
1ヶ月に1度か2度しか会えない私との時間は、毎日会う娘によって邪魔をされた。一瞬、涙が出そうになったが、それを耐える。泣いて「帰らないで」と言えれば、どんなに楽だろう。しかし、私は、泣かない道を選ぶ。
「そっか、できるだけ早く迎えに行ってあげなよ、待ってるんだから」

海は夕日に照らされピンク色に染まる。砂浜には誰もいなくなった。白く泡立ち、寄せては返す波。帰したくないの。返したくない。
愛なんて、どこにも、見つけられそうにない。
嘘つき。

七瀬 小説